2017年10月11日

原発被災者訴訟 「判決足がかりに闘う」

 「主張の一丁目一番地を完全に勝ち取った」

 福島第1原発事故で国と東電に賠償を命じた福島地裁判決後、原告団長の中島孝さん(61)は原告や支援者らの集会でマイクを握り、こう力を込めた。

 福島県相馬市でスーパー「ナカジマストア」を経営。震災後は市場の魚を買い集め、格安で販売した。大手店が休業する中、住民が連日詰めかけた。原発から44キロ。放射性物質への不安はあったが「この地とお客さんを見捨てられない」。相馬に残ると決めた。

 事故後、漁協は操業を停止。地元漁港の魚を売りにしていたナカジマストアは別の港に仕入れを頼らざるを得ず、増えたコストが経営を圧迫した。小規模事業者の組合長でもある中島さんの下には、同業者からも切実な声が集まった。「もう首をつるしかねえよ」

 事故が起きた平成23年から、組合員らと、東電に営業損害の補償を求めて交渉を試みたが、望んだ答えは得られず、25年3月に訴訟を提起。国と東電は「科学的根拠を欠く不安は賠償の対象とならない」と反論した。突き放されたように思え、怒りがこみ上げた。法廷には3度立ち「放射能を怖がるなといわれても無理。事故が先の見えない苦しみを生んだ」と訴えた。

 訴訟を通じ、子供を持つ母親や廃業寸前の畜産家など面識のなかった原告の苦悩も知った。「責任を放置する国の姿勢を改めさせたい。国が責任を取らないと同じ事故は繰り返される」

 判決は国と東電、双方の責任を認め、中島さんは原告席で仲間と固い握手を交わした。「判決を足がかりに闘いを進めたい」。今後は判決文を手に福島県内の自治体を訪れ、東電との交渉にあたっての支援を求める。



同じカテゴリー(裁判関係のニュース)の記事