2017年10月25日

「金塊ビジネス」にメス 唐津密輸事件、主犯格26日初公判

 金塊約206キロを小型船で唐津市鎮西町の名護屋漁港に密輸したとして、日本人や中国人計9人が関税法違反(無許可輸入)などの罪で起訴された事件で、主犯格とみられる男の初公判が26日、佐賀地裁で開かれる。公海上での積み替えなどの詳しい手口や、国内外での調達・流通ルートを含め、「闇の金塊ビジネス」の全体像の解明につながるかが焦点となる。

 初公判が開かれるのは、密輸事件発生後に出頭し、主犯格とされる山崎竹助被告(66)。事件を巡っては、起訴された日本人6人のうち山崎被告ら3人が青森県むつ市在住で、青森が一定の拠点となっていたことがうかがえるが、中国人とどう接点を持ったのかは明らかになっていない。

 密輸のために昨年購入したとみられる小型船の資金の出どころや、刻印がつぶされて通常の売買が難しい状態だった金塊をどう流通させるつもりだったかも不明だ。捜査関係者によると、関与した疑いのある別の中国人の男が、福岡空港から韓国経由で中国に逃走しており、背後に犯罪組織が絡んでいる可能性もある。

 起訴状によると、山崎被告ら9人は氏名不詳者らと共謀して5月30日、東シナ海の公海上で、国籍不明の船から小型船「第三十六旭丸」に金塊を積み替えた。翌31日、小型船を名護屋漁港に接岸させ、税関の許可を受けずに陸揚げし、消費税を免れたとしている。山崎被告を除く8人が、船での運び役と陸側の荷受け役を分担したとされる。

 林子忠被告(41)ら中国人3人の初公判は11月6日、木下憲一被告(65)ら日本人4人は10日に予定されている。小型船の船長斎藤靖昭被告(50)の期日はまだ明らかになっていない。

 公判では、1回の押収量としては過去最多となる時価約9億3千万円(事件当時)の金塊の没収が認められるかも焦点になる。

 財務省関税局によると、2015事務年度(7月から1年間)の金密輸の処分件数は294件に上った。約97%に当たる285件は罰金と消費税を納めれば金を返却する通告処分で、組織性や悪質性があるとして事件化されたのは9件だった。このうち一審で金の没収を認めた有罪判決は5件で、司法判断は異なる。

 関係者は「没収の判決が出れば、一度に大量に運ぶ船を使った密輸の抑止にもなる」と裁判の行方を注視している。

  

Posted by gerila at 18:14裁判関係のニュース

2017年10月24日

5人死傷で殺意否認 車運転の女、初公判 静岡地裁浜松支部

 浜松市中心街で2015年5月、乗用車が暴走し5人が死傷した事件で、殺人と殺人未遂、道交法違反(ひき逃げ)の罪に問われた中国籍、主婦(34)=浜松市東区=の裁判員裁判初公判が24日、静岡地裁浜松支部(山田直之裁判長)で開かれた。女は殺人と殺人未遂の罪について、「認めません」と起訴内容を否認し、弁護側は「運転当時心神喪失か少なくとも心神耗弱状態だった」と主張した。

 冒頭陳述で検察側は「人を死亡させる現実的危険性が高いと認識して歩行者をはねた」などと述べ、殺意があったと指摘した。弁護側は「持病の統合失調症が深刻な状態にあり、(事故は)病気抜きに理解できない」と訴えた。

 検察側は殺人、殺人未遂罪が認められない場合は「予備的訴因」として、自動車運転処罰法違反の危険運転致死傷罪か、過失致死傷罪の適用を求めた。女は罪状認否で危険運転致死傷罪も否認し、過失致死傷罪は認めた。道交法違反(ひき逃げ)の罪については「当初は(事故を起こしたことを)認識していなかった」と述べた。

 公判は11月14日までの計14回審理を行い、11月24日に判決が言い渡される。

 起訴状などによると、女は15年5月2日午前10時50分ごろ、浜松市中区鍛冶町のスクランブル交差点で乗用車を運転中、赤信号を無視して交差点に進入、歩行者に衝突し、同区の主婦=当時(31)=を死亡させ、4人にけがをさせた上、逃走したとされる。



 <メモ>予備的訴因 訴因は起訴状に記載された犯罪事実で、犯罪とされる行為に適用すべき罪名が複数考えられる時に、いくつかの訴因に順位をつけて公判を進めることができる。一つの公訴事実に訴因は一つが原則だが、刑事訴訟法は訴因を一つに特定できない場合、予備的に訴因を加えることを認めている。判決はいずれかの訴因を基に言い渡される。どの訴因も立証されていないと裁判所が判断すれば無罪になる。

  

Posted by gerila at 17:54裁判関係のニュース

2017年10月20日

親族の男を不起訴=民家で男女2人殺害―東京地検

 東京都品川区の民家で7月、住人の男女2人が殺害された事件で、東京地検は20日、殺人容疑で逮捕された親族の男を不起訴とした。

 
 男は品川区西大井の民家で住人の井上しのぶさん(75)と韓国籍のキム・スチさん(52)の胸などを刃物で刺し、殺害した疑いで逮捕された。警視庁によると、男は統合失調症で入院歴があり、地検は刑事責任能力の有無を調べていた。 

  

Posted by gerila at 17:37裁判関係のニュース

2017年10月19日

米司法省、フェンタニル密売で中国籍の2人を起訴

ワシントン(CNN) 米司法省は19日までに、死を招くこともあるフェンタニルやフェンタニル類似薬の違法製造と密売にかかわったとして、中国籍の2人を起訴したと発表した。

フェンタニルはヘロインの50倍もの作用があり、米疾病対策センター(CDC)によれば、フェンタニルや類似薬物のために命を落とした米国人は2016年だけで推定2万人に上る。

司法省の発表によると、起訴されたのは中国籍のシャオビン・ヤン(40)、チアン・チャン(38)の両被告。インターネットや闇サイトを使って米国向けにフェンタニルを販売していたとされる。

買い手の多くはフェンタニルについての知識がほとんどなかったり、純度の極めて高い薬物だとは知らなかったりするまま購入していたという。

2人は密売の痕跡を隠すため複数の人物になりすまし、利益が中国へ送金されていることも隠そうとしていたという。

フェンタニルの成分に手を加えれば、米国や中国で禁止されていないフェンタニル類似薬を生成できることに目を付け、新種のフェンタニルが禁止されるとすぐに新しい類似薬を開発して摘発を逃れていたとされる。

捜査当局はミシシッピ州とノースダコタ州での捜査を通じて2人に行き着き、中国にある化学薬品工場も突き止めた。

ミシシッピ州では2013年の交通違反取り締まりで、ヤン被告につながる薬物密売組織が摘発された。ヤン被告はウェブサイトの広告を通じて全米の複数の都市の顧客にフェンタニルを販売していたとされる。

ノースダコタ州ではフェンタニルの過剰服用で18歳の未成年が死亡した事件がきっかけとなって、闇サイトでフェンタニルが販売されていたことが判明。中国の流通網に関与していたチャン被告の摘発につながった。

チャン被告の密売組織に関連して、カナダ国籍の5人と米国在住の3人も共謀罪で起訴されている。

  

Posted by gerila at 18:36裁判関係のニュース

2017年10月18日

法人税など3400万円脱税 都内の不動産業者を在宅起訴

 法人税など約3400万円を脱税したとして、東京地検特捜部は18日、法人税法違反などの罪で、東京都千代田区の不動産会社「エィ・クエスト」の浅見満元社長(57)を在宅起訴し、法人としての同社を起訴した。

 起訴状では、浅見被告は平成27年9月期までの3年間、不動産売買に関する架空の業務委託費を計上するなどして、約1億4100万円の所得を隠し、法人税と地方法人税計約3400万円を免れたとしている。

  

Posted by gerila at 18:38裁判関係のニュース

2017年10月16日

「警察署に今も近づけない」最高裁で無罪の煙石博さん、残る冤罪

身に覚えのない窃盗の疑いで逮捕、起訴され、裁判でも1、2審共に有罪とされながら、今年3月に最高裁で逆転無罪の判決を受けた中国放送(RCC)の元アナウンサー・煙石博さん(70)が10月13日、広島市内のホテルで開かれた中国地方弁護士会連合会主催のシンポジウムに参加し、改めて自らの冤罪体験を語った。

無罪判決を受けて以来、公の場でほとんど発言してこなかった煙石さん。この日は、シンポジウムのコーディネーターを務めた弁護人の久保豊年弁護士から参加の打診があり、「たくさんの弁護士さんも参加されるとのことなので、自分の経験を語ることで何かお役に立てれば」と応じたという。会の終了後には、取材にも応じ、無罪確定後の生活などを語った。

●「伝馬船かボートで太平洋をこぎ渡った思い」

煙石さんは2012年10月、自宅近くの銀行の店内で他の客が記帳台に置き忘れた封筒から現金6万6600円を盗んだ容疑で広島南署に逮捕された。当初から一貫して無実を訴えたが、28日間に渡って身柄を拘束され、裁判でも1審・広島地裁で懲役1年・執行猶予3年、2審・広島高裁でも控訴棄却の判決を受ける憂き目に遭った。

最高裁は今年3月、問題の封筒には元々、現金が入っていなかった疑いを指摘し、煙石さんに逆転無罪を宣告したが、すでに逮捕から4年半近い年月が過ぎていた。それだけに煙石さんは無罪を喜ぶ一方で、「『おめでとう』とは思えないのです。元々お金を盗っていないのに、突然とんでもない火の粉を浴びて苦しめられ、人生を失ったのですから」と複雑な思いも吐露していた。

そんな煙石さんが参加した10月13日のシンポジウムは、「フェアな刑事手続きを目指して ―人質司法と取調べ・接見における問題点―」をテーマに開催された。会の後半に行われたパネルディスカッションに、煙石さんは成城大学法学部の指宿信教授、映画監督の周防正行さん、日本弁護士連合会・取調べの可視化本部副部長の小坂井久弁護士、広島弁護士会の井上明彦弁護士と一緒に登壇した。

「突然逮捕され、留置場に入れられましたので、すごい不安と孤独感で気は動転し、最初の二晩は一睡もできませんでした」

この日、改めてそんな恐怖体験を語った煙石さん。取り調べでは、刑事に最初から犯人と決めつけられ、「防犯カメラに金を盗るところが映っているんだ」と自信ありげに言われ続けるうち、お金を盗ってもいないのに「映っていたらどうしよう」と不安を感じる不思議な心理に陥ったこともあったと明かした。

「私は『やっていません』とのどが枯れるまで訴えました。しかし、その後も刑事は『証拠はあるんじゃ』などと大声で脅し、机を叩いたり、ガタガタやったり、顔を近づけてにらんでくるような取り調べが続き、私は恐怖と不安でほとんど眠れませんでした。弁護人の立ち合いがあれば、刑事もそういうことはできなかったはずです」

そのように取り調べに弁護人が立ち会うことの有効性を指摘した煙石さん。逮捕から無罪判決を受けるまでの約4年半の日々を「家内と息子を巻き込み、伝馬船(てんません)かボートで太平洋をこぎ渡ったような思いです」と振り返り、「私のような冤罪の被害者が私のあとに出ないよう願うばかりです」と訴えかけていた。

●「家で静かにお酒をいただくのが一番の安らぎ」

煙石さんは会の終了後、報道陣の取材にも応じ、現在の生活などを語った。主なやりとりは以下の通り。

――無罪確定後の生活は?

「今はほっとして、お世話になったみなさんと密かにお酒を組み交わし、お礼を申し上げるのが精いっぱいですね。すごい戦いでしたから。今も冤罪で苦しんでいる人はいると思いますが、もう冤罪は出て欲しくない、出さないで欲しいと思います」

――やはり冤罪のトラウマなどがあるのですか。

「ありますね。今は事件の小さな記事を見ても、私に起きたことがこの方にも起きているんじゃないか、大丈夫かなあと思ったりしています。

逮捕勾留された広島南署には今も近づけません。あのあたりは私が子どもの頃は綺麗な海で、定年後はウォーキングのコースにもしていたんです。しかし、今は嫌悪感や怖さがすり込まれてしまい、近くに寄るのもいやになってしまいました」

――冤罪に苦しんだ4年半を取り戻すために何かされていることはありますか。

「家で静かにお酒をいただくのが一番の安らぎですね。あとは、お世話になった友人や知人と会ったりするのが心安らぐ時間です」

――今日のシンポジウムに参加した感想は?

「私には専門的な話はわかりませんが、多くのみなさんが力を合わせて、いい方向にかじを切ろうとする熱気を感じました。日本の警察や司法が少しでもいい方向に行くように、弁護士の先生方には頑張って頂きたいです」

煙石さんは11月7日にも東京都千代田区の弁護士会館で開かれる日本弁護士連合会主催のイベント「全国冤罪弁護団連絡協議会第26回交流会 防犯カメラと冤罪−監視社会化を考える」に参加し、事件の報告を行う(詳細は以下のURL)。https://www.nichibenren.or.jp/event/year/2017/171107.html

【ライタープロフィール】片岡健(かたおか・けん)1971年生まれ。全国各地で新旧様々な事件を取材している。編著に「絶望の牢獄から無実を叫ぶ ―冤罪死刑囚八人の書画集―」(鹿砦社)。広島市在住。

  

Posted by gerila at 09:54裁判関係のニュース

2017年10月13日

“一審で実刑”サムスン電子副会長、きょう(12日)初公判

賄賂(わいろ)授受などの容疑で、1審で懲役5年の実刑を言い渡された李在鎔(イ・ジュエヨン)サムスン電子副会長の控訴審裁判がきょう(10月12日)、本格的に開始される。

 ソウル高裁はきょう午前10時、李副会長らサムスン元・現職職員5人に対する控訴審一回公判を開く。

 この日の裁判には、李副会長が去る8月25日第1審宣告後、初めて法廷に姿を現す。なお、公判準備期日ではなく正式な公判となるため、被告人が自ら出席する義務がある。

  

Posted by gerila at 03:28裁判関係のニュース

2017年10月11日

原発被災者訴訟 「判決足がかりに闘う」

 「主張の一丁目一番地を完全に勝ち取った」

 福島第1原発事故で国と東電に賠償を命じた福島地裁判決後、原告団長の中島孝さん(61)は原告や支援者らの集会でマイクを握り、こう力を込めた。

 福島県相馬市でスーパー「ナカジマストア」を経営。震災後は市場の魚を買い集め、格安で販売した。大手店が休業する中、住民が連日詰めかけた。原発から44キロ。放射性物質への不安はあったが「この地とお客さんを見捨てられない」。相馬に残ると決めた。

 事故後、漁協は操業を停止。地元漁港の魚を売りにしていたナカジマストアは別の港に仕入れを頼らざるを得ず、増えたコストが経営を圧迫した。小規模事業者の組合長でもある中島さんの下には、同業者からも切実な声が集まった。「もう首をつるしかねえよ」

 事故が起きた平成23年から、組合員らと、東電に営業損害の補償を求めて交渉を試みたが、望んだ答えは得られず、25年3月に訴訟を提起。国と東電は「科学的根拠を欠く不安は賠償の対象とならない」と反論した。突き放されたように思え、怒りがこみ上げた。法廷には3度立ち「放射能を怖がるなといわれても無理。事故が先の見えない苦しみを生んだ」と訴えた。

 訴訟を通じ、子供を持つ母親や廃業寸前の畜産家など面識のなかった原告の苦悩も知った。「責任を放置する国の姿勢を改めさせたい。国が責任を取らないと同じ事故は繰り返される」

 判決は国と東電、双方の責任を認め、中島さんは原告席で仲間と固い握手を交わした。「判決を足がかりに闘いを進めたい」。今後は判決文を手に福島県内の自治体を訪れ、東電との交渉にあたっての支援を求める。

  

Posted by gerila at 09:37裁判関係のニュース

2017年10月10日

公判中の朴前大統領 勾留延長か保釈か=今週中に決定

【ソウル聯合ニュース】収賄罪などに問われている韓国前大統領、朴槿恵(パク・クネ)被告の公判が10日、ソウル中央地裁で開かれた。地裁は同被告の勾留延長を請求した検察と、反対する弁護人それぞれから意見を聞いた。

 検察は「朴前大統領は捜査が行われていた当時、出頭する意思を明らかにしても出頭せず、憲法裁判所の弾劾審判にも出席しなかった。足の指の痛みなどを理由に3回も裁判に欠席し、裁判所から注意されて出廷したこともある」と指摘し、朴被告が保釈された場合、今後の裁判に影響を及ぼす懸念があるとした。

 また「関連する事件の証人として喚問され、勾引状まで発付されたが、結局欠席した」とし、「このような態度を見れば今後も不拘束の状態に置かれた場合、裁判に出廷する可能性が低く、正常な裁判進行に協力することは期待できない」と主張した。

 証拠の隠滅や操作に対する懸念も指摘された。検察は「朴前大統領は前大統領として重要な証人を指揮していたことがあり、各種の懸案報告を通じそれぞれの企業の情報を保有していた」とし、「保釈された場合、主な証人に影響力を行使し、陳述を翻意させたり、証拠を操作したりする懸念が大きい」と主張した。

 その上で「このようになれば正常で常識的な裁判の進行は不可能であるのは自明だ」と指摘し、迅速に裁判を勧め、国政介入事件の実体を明らかにし、責任を問うためには勾留を続けなければならないと強調した。

 一方、朴被告の弁護人側は、財閥のSKグループとロッテグループに絡む収賄事件については勾留の延長はできないと主張した。

 朴被告の弁護を担当する柳栄夏(ユ・ヨンハ)弁護士はロッテやSKに対する起訴事実はすでに逮捕状の段階で含まれており、それに関連する内容で2回目の逮捕状を発付するのは極めて不当と指摘した。

 また「ロッテやSKに関する部分はすでに核心事項の審理が終わった状態」とし、「これ以上勾留を続ける理由が存在しない」と話した。

 証拠隠滅については、「主な証人の証言が行われ、関連する物証も検察が押収して裁判所に提出しており、隠滅する証拠がない」とし、逃走する懸念についても常識的に考えてないと強調した。 

 地裁は双方の意見を聞いた後、勾留を延長するか保釈するかは今週中に決めるとし、「もし勾留が延長されることになれば、逃走や証拠隠滅の懸念など、一般的な内容が理由になるだろう」と話した。

 朴被告は裁判長から言いたいことがあるか問われたが、首を振るだけで何も言わなかった。 

 韓国の刑事訴訟法では被告の一審での拘束期間を起訴から最長6か月としている。朴被告は今月16日に期限を迎え、勾留の延長が認められなければ保釈されることになる。そのため裁判所は今週金曜日の13日までに判断を示す可能性が高い。

  

Posted by gerila at 18:53裁判関係のニュース

2017年10月09日

<城東区役所>庁舎建て替え巡り訴訟合戦へ

 大阪市城東区役所の新庁舎を巡り、土地の一部を所有する社団法人「城東鶴見工業会」(城東区)が近く、市に庁舎の撤去や約1400万円の損害賠償を求めて大阪地裁に提訴することが分かった。工業会は市に土地を貸す代わりに、借地料とほぼ同額で新庁舎に入居する約束だったが、市が守らなかったと主張。一方、市も工業会を相手取り、入居の約束を果たすよう地裁に提訴する方針で、庁舎建て替えを巡る異例の訴訟合戦になる。【原田啓之】

 市は2007年ごろから、老朽化した城東区役所の建て替えを計画し、工業会と交渉。昨年1月、旧庁舎から約100メートル離れた現在の場所に、総事業費約69億円で新庁舎(4階建て)を建設した。敷地の約1割は工業会の所有地で、残りは市有地となっている。

 市と工業会は10年、工業会が事務所としていた土地を貸す代わりに、市が新庁舎に工業会を入居させるとの合意書を交わした。

 工業会によると、市が払う借地料と、工業会が払う庁舎の賃料は不動産鑑定で算定するものの、「近似することが望ましい」との文言が盛り込まれ、実際は相殺する前提だったという。

 市は12年、工業会と月額56万円で借地契約を締結した。しかし、昨年提示した庁舎の賃料は月額112万円と2倍になり、契約には至らなかった。

 工業会は「市は賃料をほぼ同額にするという前提を無視し、合意に従わなかった」として入居を拒否し、土地の明け渡しも求めている。

 一方、市は「同額とは約束していない」と反論。庁舎の賃貸契約を結ぶことや、本来得られたはずの賃料分に相当する賠償を工業会に求める方針だ。

 工業会は同市城東区と鶴見区の中小企業約350社が加盟。国光省三専務理事は「区民のためと思って協力したのにだまされた。高額の賃料を求められれば会の存続に関わる」と話す。

 市の担当者は「(借地料と入居料を)同額に近づけようと努力したが、鑑定に差が出た。合意書には反していない」と話している。

  

Posted by gerila at 17:36裁判関係のニュース